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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-83


(その代わり、風を失った苦しみに、悲鳴を上げていた。)

『“闇化”を望むことだ。』

(敵と立ち向かうべき、唯一の方法に、夏樹は困惑した。)

(例え偽りでも。
長年の夢だった、“闇化”を止めることが出来た。)

(それなのに、夏樹の心は、歓喜に湧くどころか、
その身体と同じように、冷たく、死んでいた。)

チリンッ

(握り締めた胸元で。 細い鎖の先に、銀の指輪が、
光った。)

(粒樹と、聖。 瑠衣と、千歳へ、夏樹は想いを馳せた。)

(受け継いだ指輪が。)

(言葉に出来ない、夏樹の想いを、受け止めていた。)

***

「大丈夫よ、美菜ちゃん。」

「もう、安心だからね。」

(美菜の母親は、そっと、上着を、美菜の肩にかけ。
病室で寄り添っていた。)

「ご心配無く、二週間程で良くなるでしょう。」

「傷も目立たなくなりますからね。」



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