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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-92


(いつも通りに、主人を送り出したい。
そう願う想いと同時に。 夏樹を連れ戻したい衝動に駆られ、
菖蒲は、整う、白手袋の手を。 握り締めた。)

「行ってらっしゃいませ。 夏樹様。」

(この街に留まることが、夏樹の願いであり。
風見ヶ丘高校の、制服に身を包むことが、夏樹にとって
どんなに嬉しく、意味のあることか。 菖蒲は分かっていた。)

「お気をつけて。」

(普通の高校生活が、待ち受けていることは無い。)

(どんなに願っても、簡単に叶えられることでは無い。)

(それでも踏み出すことには意味があり。)

(踏み留まることに、意味がある気がした。)

『背を向ければきっと、もっと見失うことになる。』

(夏樹の決意は変わらず、許された時間で、
答えを見つけようとしていた。)

『聖が、僕をここへ。 送り出してくれた。』

『僕は、この場所を捨てない。』

『ここで、答えを見つける。』

(この場所は。 この街の人々は、
FOTのメンバーと同じく、夏樹にとって。
夏樹自身が、残された最後の選択肢と、戦う理由だった。)

【“鍵”を壊せ】



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