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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-94


(この場所を失えば、人々を失えば。)

(夏樹自身には、何も残されていない。)

(風を失った今、“鍵”を壊したい衝動と、夏樹は戦っていた。)

『ソラやミイさんたちを、これ以上苦しめたくない。』

『紫苑さんや、街の人達を・・。』

(湧き上がる衝動を、夏樹は押さえていた。)

『これ以上。』

(紫苑は、そのことを感じ。 強く、差し出した手で、
夏樹の腕を掴んだ。)

ギュッ

「行こう、夏樹くん。」

(可能性がある限り、その選択をさせない。
寄り添うと決めた、紫苑の決意は固く。 ソラも、ミイも、ピュアも
菖蒲も、夏樹に関わる誰もが、夏樹を支えると決めていた。)

「うん。」

(夏樹は、想いを絞り出し。
強く、紫苑の手を、握り返した。)

ギュッ

(夏樹の手は、氷の様に冷たく。 命を宿していないかの様だった。)

(紫苑は、冷たさに、瞬間身を震わせ。
同時に。 込み上げる愛しさに。 胸を熱くした。)



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