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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter105 『風と共に』 105-95


「はぁ・・っ。」

『この人を。 どこにも行かせたくない。』

『どこにも・・。』

(紫苑は、滲む瞳で微笑み。 夏樹の手を握り締めた。)

「夏樹くん、急に。 思い出したの。」

「初めて夏樹くんと出会った時。」

(紫苑は、夏樹と手を繋ぎ。 通学路を歩き、
夏樹を見上げた。)

「こんな風に、手を繋いでくれたね。」

(二人は、空間通路の中で。
襲い来る“闇”を前に。 お互いを離さぬ様に、
手を繋ぎ合った。)

「あぁ・・。」

(夏樹も、その時のことを、思い出した。)

『あの時から。』

『この道を選んだんだ。』

(二人の想いは、同じだった。)

・・チリン・・

(風が、緑の木々を揺らし。 夏樹の深い紺色の髪を、
制服のシャツを揺らす。)



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