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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter11 『白い鳥』 11-4


***

ピチャンッ

(艶と剛の二人は、水面の様な道を歩いた。)

(小さな、赤い靴と。 大きな皮の軍用靴が、波紋を描き、
空間通路を行く。)

「姫。 俺が連れじゃ不満だろうが、よろしく頼むぜ。」

(剛は、大きな身体を屈めて、豪快な笑顔で、艶に微笑んだ。)

「ふん。 今頃、わらわの家来は、夏樹の護衛じゃ。 聖の親ばかめ。」

(艶は、頬をふくらませた。)

(艶やかな、ストレートの黒髪。
歩を進める度、鮮やかに揺れる。 赤いワンピースに、映える深紅のリボン。)

(リボンには、FOT No.5と描かれている。)

(小学生程の艶の背丈は、剛の膝の高さで、
荒々しい軍服姿の剛と並ぶと、異色の組み合わせに見えた。)

「まぁ、許してやれよ。 いつも青白い顔してるから、心配なんだろうぜ。」

(剛の言葉に、艶は、視線を先に向けた。)

「・・男は。 強くなくてはいかん。」

(何かを思い、漆黒の瞳が、煌めく。)

「強くなくては・・。」

(艶の声は、透明な道に静かに響いた。)



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