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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter16 『触れてはいけないもの』 16-11


(その中に、小さな銀の鍵飾りの指輪がある。)
(聖は、指先で、小さな銀の鍵に触れた。)

「夏っちゃんと一緒にいるのは・・。」

(聖の声は、どこか悲しげだった。 うつむく長い銀色の髪に隠れて、
表情が見えない。)

サァァッ

(聖のもとに、夏樹の気配を乗せた風が。
柔らかに届く。)

「あの、紺色の瞳を。 忘れたくないからだよ。」

(沈みかけた太陽に。 淡く光る金色の瞳を、細めた。)

『忘れたくない。』

(誰の事を話しているのか。
晃には分かった。)

「ああ・・。」

(聖が、その人のことを話すのは、めったにない事だ。)

「お前・・。」

(晃が言いかけ。
聖は、それを制するように。 街並みから視線をそらすと、
晃に振り向いた。)

「晃君。

君もそうだろう?」



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