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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter18 『刷り込み』 18-6


設計されているとか・・、いないとか。」

(菖蒲の言葉に、夏樹は身を起こした。)

「菖蒲。 その話は、千波ちゃんの前では禁句だ。」

「誤解する。」

(菖蒲は笑った。)

「くすくすっ、はい。」

コンコンッ

(その時。 後部座席の窓に、ノックが伝わり。
夏樹は驚いて顔を上げた。)

「橘さん。」

(見上げた、至近距離の窓越しに。
穏やかな笑みを浮かべる。 橘が立っていた。)

(現れた、英国紳士風の老執事は。 柔らかに蓄える白い髭の口元で
温かく微笑む。)

(白い眉毛が優しい表情を作り。
丸い小さな眼鏡の奥の瞳は、輝く。)

(夏樹は、橘がその距離に近づくまで。
まったく気付いていなかった。)

「橘さん!」

(菖蒲もそうだった様で、驚き振り向いた。)



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