HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter22 『雪の中の幻』 22-12


(思った以上に、強く、紫苑が自分を掴んでいるので。
夏樹は、不思議な気分になり。 なんだか動揺した。)

(紫苑は、少し震えていた。)

『・・怖さじゃなくて、僕に触れて。 寒いからかもしれない。』

(夏樹は、どこかパニックになりながら。
頭の片隅で、そんなどうでも良い事がよぎった。)

【ガァァッー!】

「はっ!」

(夏樹は、数メートル先から聞こえた。
“闇”の吠え声に、我に返った。)

「きゃぁぁぁっ。」

(紫苑は、恐ろしい生き物の鳴き声に。 思わず目を開き、その姿を見つめた。)

「なにっ・・、あの黒い・・。」

(恐怖に。 ますます夏樹を強く掴んだ。)

「・・! 見たらだめだ。」

(右手で、紫苑の視界を覆った。)

(そんな事をしても、すでに手遅れだと。
夏樹にはわかっていた。)

『・・早く、“闇”を片づけて。

彼女を帰さないと・・。』



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ