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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter22 『雪の中の幻』 22-7


(強い風のベールの向こう。 消えゆく。
白いレースの少女が居る。 不思議な幻の空間へ、
目を凝らす。)

ザァァァーッ

(再び、強くなる風に。 夏樹の身体は、少女から少しずつ離れ
次第に高く。 浮かび上がる。)

(吹き上げる粉雪が。 風のベールと共に舞い上がり。
夏樹の深い紺色の瞳を、遮った。)

「・・あっ・・。」

(夏樹は、右腕に。 自分を握る、紫苑の腕の力を感じた。)

「はっ・・!」

(時の流れが、次第に。
現実に戻るのを感じる。)

ザァァァーッ

『戻る・・。』

「くっ・・!」

(雪の数粒が、夏樹の瞳を通り過ぎる時、
夏樹は、右手で。 紫苑の細い背中を強く支えた。)

「大丈夫。」

「僕から、離れないでいて。」

(夏樹の、腕の中で顔を埋め。
紫苑の明るいベージュ色の髪が、冷たい強い風に舞い上がる。)



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