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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter22 『雪の中の幻』 22-8


(腕の中の。 紫苑の鼓動を。 自分の胸に感じ、夏樹はそっとつぶやいた。)

トクン・・

(風のベールに。 吹雪の向こうに消えゆく少女の。
深い紺色の瞳を。
夏樹は、最後まで見届けた。)

トクン・・

(夏樹と紫苑は、再び、光柱の中にいた。)

コオォッ

(風に揺れる、茶色のプリーツのスカート。)

(夏樹の上着をぎゅっと掴み。 腕の中で、紫苑は。
冷たい風と恐怖に小さく震えていた。)

「・・・っ。」

(紫苑の温かな体温が。
夏樹の、冷たい身体に伝わる。)

『彼女を、無事に帰すんだ・・。』

『僕に、出来るか・・?』

(現実に引き戻される。 夏樹の中に、今まで
感じた事のない感覚が、流れ始めていた。)

(夏樹は、紫苑を支え。
深い紺色の瞳で、光柱の開け行く先に。 強い視線を向けた。)

『僕が・・守る。』



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