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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter23 『温度差』 23-1
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「首相。 FOTからの臨時報告です。」
(黒い柱の並ぶ、官邸の執務室。 抑揚の無い声で、
会議を遮る者がいる。)
(黒いサングラスの下、無表情な顔の執事が。 首相にメモを差し出した。)
(閉ざされた窓と、照明が、仄暗く。
動かない空気は、室内に居る人々と。 とりわけ中心に居る人物の
醸し出す雰囲気を表しているようだ。)
「・・ふむ。」
(首相は、瞳だけを机上のメモに移した。)
(人前では、形作られた笑顔を浮かべるその顔も、
身内の重役だけが居るその場所で。 本来の、頬骨が目立つ、筋張った顔に戻っていた。)
「・・民間人一名を異空間に巻き込む。」
「・・か。」
(左右に座る、重役たちが、その声に、わずかに顔を動かした。)
「そんな報告をいちいち上げてもらっては困る。」
「国民への対応は、FOTに一任している。
私の許可を得るまでもないだろう。」
「警察や公安も介入出来ない。」
「その必要もない。」
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