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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter23 『温度差』 23-8


「本当に。 どうして夏樹様といると

いつもこうなんでしょうか・・。」

(菖蒲は、両手で。 四角い眼鏡の上の額を覆った。
サラサラと細い黒髪が。 うつむく菖蒲の頬に流れる。)

(今度ばかりは、取り返しのつかない失敗をした様に思った。)

『側に居ようと思うと・・。

私を置いて、いつも遠くへ行ってしまう・・。』

「・・。 夏樹様・・! どうかご無事でいて下さい・・っ。」

「白さん・・。

私は、執事失格ですね?」

「・・むしろ、主人の側に居ない方が良いのかもしれません。」

(菖蒲は、静乃からの応答を待ち。
後部座席の白に、つぶやいた。)

「・・・菖蒲ちゃ〜ん・・、落ち込むのは〜・・。」

「・・無事に・・ここを〜・・抜け出せてからに〜・・

してくれない・・かなぁ〜?・・・。」

(白は、傾き。
まるで崖から落ちる寸前で、
空間の溝にわずかに引っかかっている。 白い大きなリムジンの後部座席で呟いた。)

ヒュオオオオーッ



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