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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter25 『芝居』 25-10


(菖蒲は、立場も忘れ、周りに立つ面々に向き直った。)

「何しているんです、皆さん。

早く、ここを出ましょう。」

「話なんて、している場合ですか?」

(菖蒲の言葉に、時雨が、苛立った。)

「お前が、命令するな。」

「・・そんな場合じゃないでしょう!」

(菖蒲と時雨の二人が、掴み掛かったところで、
静かに。 様子を見守っていた橘が。
口を開いた。)

「兄弟げんかは、およしなさい。

菖蒲さん。 時雨さん。」

(橘の、白い眉毛は優しい表情を作り。
丸い小さな眼鏡の奥の瞳は、穏やかに微笑んでいた。)

「聖様の前ですぞ。」

(橘の言葉に、二人は両手を離した。)

「・・お爺様。」

(菖蒲は安堵し、橘に微笑んだ。)

「ほっほっ。 橘、と。

お呼びください。 菖蒲さん。」



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