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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter25 『芝居』 25-3


(ゆっくりと。
スローモーションの様に。 大きな両手の中で、
眠る様に。

緩やかに身体の力が抜け。

茶色の大きな瞳が閉じ。
意識を失った。)

トサッ・・

(紫苑の、明るいベージュ色の髪が、しなやかに揺れ。
細い身体が、現れた男の手で、くずおれるのを。

大きな、茶色の瞳が。 そっと、閉じるのを。
夏樹は見た。)

「・・だめだっ。」

(夏樹は思わず、男に、立ちはだかった。)

(夏樹が、何か言う前に。
隣に立つもう一人の男が、深い声で、注意した。)

「時雨、手荒なまねはよせ。」

「後々面倒なことになる。」

(現れたのは、時雨と。
晃だった。)

「畏まりました。」

(時雨は、晃に答え。 張り詰めた気配が漂う、燕尾服姿で。
菖蒲と良く似た。 流れる黒髪の奥に、
全く表情の読めない、冷やかな視線を浮かべ、夏樹を睨んだ。)



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