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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter28 『姉弟』 28-11
「うん。」
(夏樹はまだ、今日で屋敷を去るという実感が、
湧かないまま。
白いリムジンから、住み慣れた我が家へ、降り立った。)
(白を、リムジンに残したまま。
菖蒲は、毛布ごと、紫苑を抱きかかえ。 夏樹と共に、
玄関へ向かった。)
サワサワサワッ
(屋敷を囲む、緑の森から。
涼しい風が届き。)
(裏手から、細い小道を通り。
辺りは、バラのガーデンから届く香りと。 キッチンから香る、
食欲を誘う、夕食の香りに包まれ。)
(温か味のある四本柱の玄関に光る。
オレンジのランプの灯りが。)
(疲れた夏樹の身体に、染み渡る
温かさを与えた。)
「これで、良かったのかな?」
(風格あるアンティークの扉の玄関に立ち。
夏樹は、ふと足を止めた。)
「はい。
お屋敷には、いつでも。 すぐにお帰りになれます。」
(夏樹の気持ちを察した菖蒲が、穏やかに微笑んだ。)
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