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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter28 『姉弟』 28-2


(夏樹は、痛みを堪え、
至近距離で目のやり場に困る。 彩の銀の十字架の、アクセサリーが揺れる胸元から
目を逸らし、瞳を閉じた。)

(白衣に身を包んだ彩の、鮮やかに色づく、ピンクにカールした髪は、横に高く。
ポニーテールに束ねられ。 耳元の銀のピアスに、赤いネイルが華やかだった。)

シュッ

「これで良し。」

(赤いネイルの手元が施す処置は。
とても的確で。 痛みも少なく、素早い。)

「・・ありがとう。」

(夏樹は、お礼を言うと、立ち上がった。)

「夏樹君。

少しは、自分の事も大切になさい。」

「千波ちゃんが心配するわ。」

(彩は、二人だけの診察室の中で。
夏樹と向き合っていた。)

「うん。 そうだね。」

(夏樹は、微笑んだが。
彩には、そのアドバイスが、夏樹に届いていない気がした。)

「もぅ。

行って良しよ。 お引越しするんですって?」



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