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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter30 『交換条件』 30-1
キキッ
バタンッ
(白い、大きなリムジンが。 白亜の洋館の、正面玄関に止まっていた。)
(菖蒲は、夕闇に、ほのかに灯るオレンジのランプの下で。
紫苑の為に、ドアを開き。 安全に扉を閉めた。)
カチャッ カタタタッ
(オレンジ色に染まる、少し歪んだいくつもの、屋敷の1階の窓奥からは。
メイが、ダウンしたことで、より一層慌ただしくなったキッチンの音が
夏樹のもとにも響いていた。)
「夏樹様、トランクはそれ一つで、よろしいでしょうか?」
(菖蒲は、風格のある四本柱の玄関の前で、
窓へ向かい、立ち止まっている夏樹に声をかけた。)
「あ、ああ。」
(夏樹は、はっとして、黒い小さなトランクを片手に。
菖蒲に振り返った。)
「千波様は、夕飯のお支度に。 お忙しい様ですね。」
「皆様も、出払ってしまっていますし。
お見送りがどなたもいらっしゃらないのも・・なんですが。」
(夏樹は、隣に立つ。 少し見上げるほど背の高い菖蒲を見た。)
(温か味のある、オレンジの灯りの中で、黒の燕尾服が。 揺れるランプの炎に
仄かに光っている。)
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