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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter30 『交換条件』 30-2


(黒いネクタイと白手袋は、いつもの様に、心地よく整い。
オレンジ色の灯りを時折反射する。四角い縁の眼鏡。 サラサラと流れる黒髪の奥の
穏やかな瞳の笑顔に、夏樹は微笑んだ。)

「また時々来るだろうし。

どうせ、皆とは仕事で会うんだから。」

「それに、

大して離れるわけじゃないのに。

見送られるとかしたら。 照れくさいよ。」

「そうですね。」

(菖蒲は、オレンジのランプの下で、微笑む。 自分の主人を見た。)

(透き通るような白い肌は、灯りを受け。
深い紺色の瞳は、穏やかに微笑んでいた。)

「・・夏樹様。

今日は、本当にすみませんでした。」

(菖蒲は、夏樹が自分を責めている様子を見せないので、
かえって申し訳なく思っていた。)

「・・何が?」

(突然、深々と頭を下げる菖蒲に、
夏樹は、まったく何のことか見当がつかずに。 面食らった。)

「いえ・・、その。

肝心な時に。 いつもお側に居なくて・・。」



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