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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter30 『交換条件』 30-11


トッ

(誠司の記憶の中と、違わない。 強いバラの香り。 真っ白な派手なスーツの長い脚が、
明るいライトの下に降り立つ。)

(誠司の目の前に、空間の気流を受けて。 白いスーツの裾がはためき。
施された金の装飾が眩しく光った。)

サァァッ・・

(右から左へ流れる様に光る、長い銀の前髪。 見覚えのある金色の瞳が、
室内の光に、煌めいた。)

トッ

(隣に、降り立ったのは、黒の燕尾服に身を包む。 細身の英国風老紳士。)

「誠司様。 お久しぶりでございます。

御活躍は、常々伺っております。」

「突然の、この様な形でのご訪問を、お許し下さいませ。」

(橘は、丁寧にお辞儀すると。 小さな、丸眼鏡の奥で。
微笑んだ。)

「何しろ、機密事項に関する事だからね。」

「周りには、知られない方が良い。」

「誠司君。 悪いが、外の人たちには、少々眠ってもらったよ。」

(聖はそう言いながら。 自分を見つめている、誠司の。 焦げ茶色の瞳を見た。)

(誠司は、二人が突然現れた事に、驚いたが。 二人の姿を見てすぐに微笑んだ。)



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