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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter31 『交渉』 31-9
「・・消したのは。
あの時の出来事だけでしょうか?」
(誠司の問いかけに。
橘が答えた。)
「・・誠に、残念ではございますが。
それ以前のご記憶も。 私の手で、全て消去させて頂きました。」
(落ち着いて、静かにそう答える、老紳士の。
丸眼鏡の奥の灰色の瞳からは、いつもは温もりを持って光る。
明るい光が消えているように見えた。)
「橘さん・・。」
(橘が、それは聖のせいではなく。
自分が行ったのだと、強調しているように。 誠司には感じられた。)
「そういう訳だから、
夏っちゃんは。 君の事を覚えていないし。」
「千歳君の事も、
全く覚えていない。」
「つまり。 君と桜君には、
夏っちゃんや千波ちゃんの事を、
知らなかった事に、しておいてもらいたいんだよ。」
(無茶な願いに、誠司は戸惑った。)
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