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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter32 『柔軟』 32-3


パタンッ

(紫苑がゆっくりと座席から降り立ち。
眼下の街を見つめている夏樹に、振り返った。)

「夏樹くん。

ここは、桜ヶ丘っていうの。

昼間だと、もっと素敵な景色が見れるの。」

「あとは、春!」

「この先の坂道はね、ずっと続く。

桜並木なのよ。」

「今年もきれいだったのに〜・・。 ちょっと遅かったね。

でも、来年、一緒に見れるから。」

(紫苑は、明るいベージュ色の髪を揺らし、
夏樹の隣まで駆け寄ると。

下へと続く、ほのかな街の明かりが照らす坂道を
指さし、微笑んだ。)

「・・へぇ。」

(夏樹は、何のためらいもなく自分に近づく紫苑に。
何だか、どぎまぎした。)

『怖いとか・・思わないんだろうか?』

(夏樹は、紫苑が自分のすぐ側で、楽しげに指さす先を見つめた。)



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