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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter32 『柔軟』 32-5


(夏樹は、思わず紫苑の笑顔に振り返り。
深い紺色の瞳を瞬かせ、オレンジ色の灯りが灯る、白い建物を見上げた。)

『どうやら彼女にとっては、

僕に、不思議な力があるとか・・、それほど気に掛かっていない様子で。』

『それより、引っ越してきた事の方が、大きい様だった。』

(白い大きなリムジンは、
今は、白い壁をオレンジの灯りが染める。
丘の上の、真っ白な二階建ての建物の前で停まっていた。)

「可愛らしいアパートですね?

夏樹様。」

(菖蒲は、街灯の下で煌めく黒の燕尾服を揺らし。 夏樹に微笑んだ。)

「千波ちゃんが気に入りそうだよ。」

(夏樹は、急に目の前に飛び込んできた現実に。 まるで、時差を感じる様に、
何だかついて行けていない様な気がした。)

『わくわくしないと言ったら嘘だけど・・。』

『喜んで良いものかどうか・・、複雑な気分だ。』

「どうしよう菖蒲。」

(問いかけながら、夏樹は、アパートの玄関を見つめていた。)

「何か、緊張してきた。」

「・・そ、そうですね。」



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