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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter34 『そのままで良い』 34-11


(菖蒲は、笑顔で橘に礼をし、
銀の扉に向かい背を向けると。 サラサラと流れる、一つに縛った後ろ髪を靡かせ
来た時よりも軽い足取りで、扉から出た。)

(橘は、菖蒲を見送った後、
小さく、呟いた。)

「菖蒲さん・・。

夏樹様を頼みますぞ・・。」

(橘は、丸眼鏡の奥の、小さな灰色の瞳で。
ガラス張りの壁面に映し出された。
自身のネクタイに止められている、小さな銀の鍵飾りを見た。)

「今夜は、庭にお出になられるでしょう。」

(橘は、鏡張りの壁面の中の一枚の中へ、
一歩踏み出し、まるで、水面が水滴に揺れる様に。

ゆっくりと波紋を残しながら。

鏡の向こうへ消えた。)

***







『そのままで良い』
Chapter34 End

Fragment of Time・・・時の欠片の道しるべ



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