HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter34 『そのままで良い』 34-5


***

チンッ

(エレベーターが最上階で停止した。)

ガガッ

(菖蒲は、エレベーターから降り。 仄暗い、シャンデリアの照らす。
長い、赤絨毯の廊下へ下りた。)

(四角くビルの中心にくり抜かれた、吹き抜けの巨大なガラス窓は、
周囲のビル群の夜景を反射してキラキラと光っていた。)

「やはり、ここは誰も居ないですね。」

(細く長く続く廊下を照らすには、暗過ぎる程落とされた照明のせいで。
目的地である廊下の突き当たりは。

暗く陰り。 ぼんやりと浮かぶ、シャンデリアの灯りと、星空だけが照らしだしていた。)

『このフロアだけは特別です・・。』

『廊下の先が・・、いくつもの空間に繋がっている様な気がします・・。』

(廊下へ一歩踏み出すと。
空間移動の際に感じられる、纏わりつく。 不思議な重力を足元に感じた。)

『無事に、帰れます様に。』

(菖蒲の黒い燕尾服に施された、小さな金の装飾が。 ほのかなシャンデリアの
明かりの下を。
通るたび、小さく煌めき。)

(サラサラと流れる細い髪質の黒髪と、黒い四角い縁の眼鏡が、夜空に映し出され。
静かに菖蒲の黒い瞳が瞬いた。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ