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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter34 『そのままで良い』 34-7


キイッ

(菖蒲は、躊躇いがちに、白手袋の手を伸ばし。 扉を開いた。)

ガチャッ

「あ・・、橘さん。

遅くなりました。 夏樹様と紫苑様をお送り致しました。」

(扉の向こうには、部屋の中央辺りに。 橘が立っていた。)

(広い室内は、ソファーや机。 テーブルや照明。
全てが白で統一され。

仄暗い廊下と打って変わり。 眩しいほどで、菖蒲は思わず瞬きした。)

(広い部屋は、大きな窓の他は、全て全面鏡張りになっていた。)

『初めて来た時は、驚きましたが・・。

相変わらず、眩し過ぎるお部屋です・・。』

(菖蒲は、どこを見て良いのか分からないほど、辺りを反射する鏡の壁に。
何だかクラクラした。)

(部屋の真ん中で、橘は。 いつもと変わらず、平然と穏やかに微笑んでいた。)

『橘さんは、どうして平気なんでしょうか・・?』

(白い髪は、少しくせづいて滑らかに流れ。 白い眉毛が優しい表情を作り。
丸い小さな眼鏡の奥の瞳は、穏やかだった。)

(整えられた風貌の老執事は、英国紳士を思わせた。)

「菖蒲さん。



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