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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter36 『はじまりの夜・ひとひら』 36-9


(夏樹は、足元に。
紫苑が灯した小さなキャンドルから。 ほのかな甘い香りと。
揺れる小さな光が届くのを見つめた。)

「紫苑さん・・。 今日はいろいろとごめん。」

(紫苑の髪が。
夜風になびき。 夏樹は、深い紺色の瞳で瞬いた。)

「これを。」

(夏樹は、ポケットから取り出し。
小さなジュエリーボックスを。 隣のベランダに立つ紫苑に差し出した。)

「なあに?」

(紫苑は、興味深げに、ベランダに身を乗り出した。
低く白い柵越しに、二人は話した。)

「持っている決まりだから。

渡しておく。」

(夏樹は、一歩紫苑に近づき。
触れられるほど、近づいた。)

「うっ・・、うん。///」

(間近で見る、深い紺色の瞳は。 まるで吸い込まれそうに煌めき。
透き通る白い肌に。 紫苑の胸は高鳴った。)

「はい。」

「ありがとう。」

(小箱を受け取った、紫苑の伸ばした指先は、僅かに夏樹の冷たい手に触れた。)



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