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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter37 『時を生きる』 37-10
(決して、消えることの無い思い出と、出口の扉さえ見失う。
四方を取り囲むバラの海の中で、二人は。 甘く強い芳香に包まれた。)
『囚われてはいけないと、知りながら。』
『魔力の様に惹きつける。 甘い香りが。
僕達を包んでいた。』
(深い紺色の瞳は、こぼれそうな涙の雫をいっぱいに集め。
潤んでいた。)
【あなたは・・、思い出を選んだりしない・・。】
【もっと大切なものが・・、必ずあるから・・。】
「粒樹・・。」
(まるで、淡雪の様に儚い。 粒樹の身体を、聖は支えた。)
(目の前で、夜露と甘い香りを纏い。 聖の流れる、銀髪が揺れた。)
「僕の願いは・・
ただ一つ。」
「君を取り戻す事だ。」
「君と出会ったあの時から・・、何年経っただろうか?」
「必ず、君を元に戻してみせる。」
(金色の瞳は、強い光を放った。)
(粒樹の真摯な言葉は、聖に届かず。
少しも、聖の意志を揺るがさない。)
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