HOMENovel
Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter38 『現実の世界へ』 38-9
カタタッ
(キッチンの方から、遠く。 朝食の支度をしている音が。
軽やかに響いてくる。)
(聖の白いスーツの足が、温かな風合いの木製廊下へ降り立つ。)
(頭上には、今は明かりの灯っていない、アンティークのランプが連なっていた。)
「いつもと同じと言えば、同じだが。
夏っちゃんが居ないと、違うものだね。」
(聖は、ふと呟いた。)
「左様でございましょう。」
(橘は、何気なく呟いた聖の一言が。
さも大切な事であるかの様に、聖の心に。 強く留まることを願って。
深く噛み締め、頷いた。)
「さて、無愛想な上の連中の相手をする前に、
腹ごしらえをしないとな。」
(屋敷の中は、香ばしい食欲を誘う香りで溢れていた。)
パタタタタッ
(美味しそうな香りと共に、軽快な足音が、近付いてくる。)
「おはよう! 聖。」
「橘さんも!」
(聖の前に現れたのは、焼きたてのパンをカゴにのせた千波だった。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』