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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter45 『空席』 45-1


キキッ

バタンッ

(真っ白なリムジンは、小さな商店街を抜けた先に続いている。
広く、長い銀杏並木へと停車した。)

トッ

(スニーカーの足が降り立つ。 ドアの外に吹く風が、夏樹の深い紺色の髪をゆらし。
眩しい木漏れ日に、目を細める。)

カチャッ

トットッ

「夏樹様、出来ましたら私にドアを開けさせて下さい。」

(運転席から慌てて、後部座席のドアの前に回り込んだ菖蒲が。
すでにドアを開き、車外に出た自分の主人を。 少し寂しげに見つめた。)

「はっはっ。 別に良いよ。」

「気にしなくて。」

(夏樹は笑った。)

「・・私が気にするんです。」

(菖蒲は、四角い黒縁眼鏡の奥で、困った様な表情をした。)

(夏樹は、車から一歩離れ、頭上高く、続く。 青々と茂る、銀杏の木々を見上げた。)

「この街は、自然が多いな。 僕達に向いているかもしれない。」

(二人は、朝の車通りでにぎわう、背の高い銀杏並木が続く。 風見通りに来ていた。)



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