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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter45 『空席』 45-2
(二人の視線の先には、遥か遠くまで。 カーブして続く並木。
夏樹のもとに、吹き抜ける街の風が。 街の賑やかな音と、
さわやかな緑の香りを運んだ。)
「さて・・と。
反応は、この辺りだな。」
「菖蒲、少し歩いてくるから。 中で待っていて。」
(左腕に止めた、黒い腕時計の文字盤を見つめながら。 夏樹は、歩き出そうとした。)
「いいえ。」
(夏樹は、背中から聞こえた声に、思わず立ち止まった。)
(いつも通り、何気なく言ったつもりだったが。
菖蒲は、いつもと違った反応をした。)
「ここで、お待ち致します。」
「お側にいては、お邪魔かもしれませんので。
せめて、ここで。」
(菖蒲は、朝日に艶やかに光る、黒い燕尾服に身を包み。 真剣な表情で、
夏樹を見つめていた。)
(サラサラと流れる細い黒髪が涼しげな風に揺れ、後ろで縛った、髪を揺らす。)
「遠くに行かれる様でしたら、私も移動いたしますので。」
(夏樹は、申し出を断ろうと思ったが、菖蒲が真剣なので、
任せる事に決めた。)
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