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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter46 『見えない敵』 46-2


(夏樹は、深い紺色の瞳を、視線の先。
商店街の方角へ向けた。)

サァァッ

(頭上高く、銀杏並木の葉を、揺らした風が。
夏樹の元に届き、深い紺色の髪をそっと撫でた。)

「大丈夫。」

「遅くならないうちに、けりをつける。」

「白が、来るまでの間。 ほんの少し、時間をかせげれば良い。」

「静乃さんに、叱られるからな・・。」

(夏樹は、そっと微笑み。
紺色の髪から、白いシャツの上を滑り、風見ヶ丘高校の紺色のネクタイを揺らす風を、
そっと。 手のひらにつかまえた。)

ヒュオッ・・

(真っ白な手のひらから、白い指先に吹き抜けた風は、
小さな流れとなって、夏樹の手から離れた。)

『向こうだ・・。』

『風見通りの入口の辺り。

そこに居る・・。』

(夏樹には、風が、その場所を示してくれている様な気がした。)

(何よりも、朝に似つかわしくない。 重苦しい気配が。
少しずつ、風見通り入口から、夏樹の元へ。 届き始めた。)



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