HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter48 『風と水』 48-8


「ほんとうに・・。 気に入らない子ね・・!」

(クロエは、苛立ちながら。 金の星座が散りばめられたような、美しい赤紫の服を
揺らした。)

(透き通る透明な、クロエの身体に。 ポニーテールに束ねられた黒髪と、
両脇から流れる黒髪が、舞い上がる雫に濡れ。 朝露を受ける、蜘蛛の糸の様に、光る。)

「ふん・・。」

(クロエは、水柱の消えた先で。 白が、眩いほどに輝く、一粒の時の欠片を手にし。
元の姿に戻った老婆を、労わる様に支えて座る様子を見た。)

(今は、それ以上触れられない。 透明な自身の身体に苛立ち、纏わりつく様に長く、
美しい黒髪を揺らした。)

「馬鹿ね。 せいぜい頑張って、集めなさい・・。」

「私たちは、楽しませてもらうわ。」

(クロエは、黄色の瞳を揺らして、地上を見下ろした。)

(クロエの冷たい視線の先に、真っ直ぐに、自分を見上げている。
強い視線がある。)

「・・・っ。」

(深い紺色の瞳が、クロエを見上げている。)

(クロエは、黄色い瞳を揺らし、小さな唇で微笑んだ。)

「良いわ。 いずれ、全部奪ってあげるから・・。」

「くすくすくすっ。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ