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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter49 『解けない魔法』 49-7


(聖は、銀の指輪がいくつも光る長い指先で、砂糖を二つカップに落とした。)

「もしくは、空間の溝に、潰される様に設計してあるんだけど。」

(夏樹は、白いテーブルを挟んで、向かい合いソファーに腰掛けながら。
聖の言葉を聞いて。 飲もうとして持ちあげた紅茶のカップを、ソーサーに戻した。)

「ああ・・。 そう。」

『あの気配の持ち主は・・、消えた時。 溝に落ちたわけではない様な気がするな。』

(なるべく想像しない様にしながらも、時折見た事のある空間の溝に。
誰か落ちているのだろうかと、思うと恐ろしい気がした。)

「今日は、誰も飛ばされた形跡がないからね。」

「左様でございますなぁ。」

(聖の隣で、橘も気軽に微笑んでいた。)

「・・。 でも、誰かが居たんだ。」

「どんな人だったんだい?」

(聖の問いかけに、夏樹は、紺色の瞳で瞬いた。)

「見えなかった。」

「ん?」

(聖は紅茶のカップを片手に、夏樹を見た。)

「・・目には、見えなかったけど。

誰かが居たんだ。」



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