HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter54 『夕暮れの風見ヶ丘』 54-1


「おい! 雨宮。」

(茶色の皮鞄を片手に、教室を出て行こうとした夏樹を、
後ろから、駆が呼びとめた。)

『・・!』

(夏樹は、聞こえない振りをして、教室の後ろ扉から
暮れはじめた空を映す。 賑やかな廊下へ、歩きだした。)

「お〜い。」

(駆は夏樹を追いかけた。)

「待ってろって。」

「いい物があるんだ。」

(夏樹が、無視するのもかまわず、駆は。 夏樹の前に回ると、
行先を遮って立った。)

「・・何?」

「急いでるから。」

(出来るだけ、駆の顔を見ない様にしたが、
声をかけられただけで、夏樹はどこか動揺した。)

「そうか。 そうか。」

「またすぐバイトか?

なら、これ持ってけよ。」

「姉ちゃんが前持ってたやつだから、使えね〜かな?」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ