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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter55 『時の流れ』 55-10


***

(鳥の声には、艶を案ずる。 温かさと、悲しみが込められていた。)

〈ご覧になったでしょう?

あの様に、喜んで。〉

〈お会いできる日を、待っておられる。〉

「楓。 そうじゃない。」

***

「翡翠家の者は、魔から身を守り、征する為に。 時には、自らの時を操る術を

用います。」

「わたくしの様に・・。」

(楓は、言いながら。 そっと、着物の袂を揺らしながら、手のひらを自らの顔に
かざした。)

シュウッ・・

(同時に、流れる黒髪は、ふわりと白髪に変わり。 楓は、本来の年齢の。
老婆の姿に戻っていた。)

***

〈あの子は、今を生きられず・・。〉

〈時を・・止めました。〉

(白い鳥から聞こえる、楓の本来の年老いた声に。 晃は、じっと耳を傾けた。)

〈あの時の・・まま。〉



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