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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter55 『時の流れ』 55-5


「同情をさそおうとしても、無駄じゃ。」

(艶は、ぷいと、そっぽを向き。 隣に立つ、背の高い晃の、黒い部屋着の裾を掴んだ。)

「兄様を、翡翠の家が拒む限り・・。

艶は、帰らぬ。」

〈艶姫様・・。〉

「くっくっ。」

(晃は微笑み。 白い鳥は、小さな嘴で、ため息をついた様に見えた。)

〈晃様からも、何か言ってやってくださいまし。〉

「艶。 俺は、別に気にしていない。」

「月に一度行くくらいなら、分家の奴らも、気にしない様だからな。」

(小鳥は、嘴をカチカチ鳴らした。)

〈そうではござりませぬ。 晃様・・。 宗家に当主無き今。

翡翠の敷地に侵入するは、命無きも同然。 それを望んでの事でございます。〉

「悪いがまだ、そうなるわけにはいかないが。」

「礼を通して、山門から、歩いて行かせてもらう。」

〈晃様・・。〉

(晃の言葉に、艶が期待の眼差しで、楓と呼ばれた、白い鳥を見つめた。)

「それでっ!?」



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