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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter57 『雨音』 57-11
「だめだめ。」
(怖い思いを振り払おうと、紫苑は。 小さく首を振った。)
「夏樹くんが、居てくれるもの。」
(広いベランダの窓に、小さな雨粒が。 落ち始めた。)
ポッ ポッ・・
***
ポッ・・ サーッ・・
(雨は、少しずつ、降り始めた。)
[「千波ちゃん、さっそく帰ったみたいね?」]
「そうだね。」
(夏樹はゆっくりと、二階の廊下の突き当たりの窓へ近づいた。 外を見つめていると。
大きな白いリムジンが、一瞬通りの前に姿を現し。 玄関からあわてて出て来た
千波を乗せて。)
(次の瞬間に見えなくなっていた。)
(遠慮して、リムジンの中で千波の帰りを待っていた菖蒲が、
すぐに迎えに来てくれたのだ。)
[「それじゃぁ。 わたしもそろそろ戻るわ。」]
[「気になるデータは、いくつか送っておくけれど。」]
(耳元で、通信機から聞こえる静乃の声に耳を傾けていながら。
夏樹の心は、窓の外の景色に惹きつけられていた。)
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