HOMENovel
Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter57 『雨音』 57-12
サーッ・・
(窓際に立つ夏樹の元に、静かな雨音と。 外気の冷たさが、窓越しに伝わってくる。)
『雨が、降って来た。』
[「宿題が終わってからね。」]
「あ・・ああ。
分かった。」
(夏樹は、菖蒲が去った後の通りの前を見つめながら。
夜空を覆う、厚くなった雲が動き。 次第に、雨が降り出す様子を、
静かに見つめていた。)
『どうしてだろう・・。』
『夜空を覆い隠す暗い雨雲は・・。』
『いつも。 何かを思い出させた。』
『闇のことだろうか? 不安とも違う、何か嫌な予感が。』
『僕の胸の奥を、ざわつかせた。』
(冷たい窓に、いくつもの水滴が流れ。 雨粒を受ける窓ガラスに反射して映る。
夏樹の頬は、蒼白なほど白く。 少しくせづいて流れる、深い紺色の髪の間で。
夜空を映す。 深い紺色の瞳が、物憂げに揺れていた。)
(静乃の言葉に、夏樹は想いを逸らそうと、窓から視線を外した。)
[「それじゃあ、また。」]
(夏樹の返事に、静乃は微笑み。 通信を切った。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』