HOMENovel
Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter57 『雨音』 57-15
「ありがとう。」
(紫苑は、嬉しそうに夏樹からタオルを受け取った。)
「クロっていうの。
かわいいでしょう? ご近所の野良ネコちゃんなの。」
「かわいそうに・・。 急に降って来たから、ぬれちゃって。
寒かったでしょう?」
「ニャァ」
(クロは、紫苑が優しく拭いてくれるのを、気持ち良さそうにしながら甘える声で
鳴いた。)
(タオルの中で、子ネコはとても小さく。
気持ち良さそうに、時々目を閉じながら。 濡れた毛並みが、ふわふわとしてくると、
紫苑の膝の上にちょこんと腰かけた。)
「かわいいね。」
(夏樹も思わず、紫苑の膝の上を覗き込んだ。)
(真っ白な肌の手を、そっと差し出す。)
「シャッ 二ャァッ・・」
「んっ。」
(覗き込んだ夏樹に、子ネコは小さな牙をむき。 乾いたばかりの背中の毛を逆立てた。)
「・・嫌われたらしいな。」
(夏樹は、眉根を寄せ、差し出した手を引くと。 子ネコから離れた。)
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』