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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter58 『夢』 58-1


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***

「はぁ・・。」

(幼い夏樹は、白い息を吐きながら。
小さなスニーカーが踏みしめる、足元を見つめた。)

サクッ・・

(足元には、降り積もったばかりの柔らかな淡雪。)

「はぁ・・。」

(顔を上げた、大きな。 深い紺色の瞳の先に、見えるのは。
ただ、どこまでも続く。 白い丘と、灰色のグラデーションに染まる空だけだった。)

***

『ここは、どこだろう?』

(幼い夏樹の隣に、高校生の、現実の夏樹は立っていた。)

(けれど、そちらの夏樹の方がまるで幻の様に。 実体を持たずに、
半透明の姿で。 不思議なその世界に、留まっている様だ。)

『あの時、見た。

幻の世界の中にいるみたいだ。』

『それはきっと。

いつも良く見る夢だった。』

『目が覚めた途端に、いつも忘れてしまうんだ・・。』



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