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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter58 『夢』 58-2


『今夜は、覚えていられるだろうか?』

(そんな事を思いながら、夏樹は、小さな夏樹の。
歩く後を追った。)

***

サクッ・・

サクッ

(灰色の空から、静かに降り積もる雪は。 幼い夏樹の、
深い、紺色の髪に次第に積もり。 小さな足元は不安定だ。)

(半ズボンに、薄いパーカーの上着しか来ていない小さな夏樹の手足は、
すでに、僅かに震えだし。 かじかんでいた。)

***

「大丈夫か?」

「どこに行くんだ?」

(半透明の夏樹は、自分のことが見えないらしい。 すぐそばを歩く、
幼い頃の自分に話しかけた。)

***

サクッ

「・・はぁっ。」

(真っ白な雪を反射して光る。 幼い夏樹の深い紺色の瞳は、
唯一人。 その場に取り残されていることへの不安か、見失ってしまった誰かを、
探し。 今にも、涙をこぼしそうに。 潤んでいた。)



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