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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter60 『ターゲット』 60-3
(幾つも行き過ぎる異空間は、まるでスライドショーの様に、
風見市内の様子を次々映し出しては。
夏樹の行先を追った。)
(透明な、透き通る氷が敷き詰められた様な床が続くその場所は。
がらんとして
何も無く。 天井から浸食する溶け出す黒い染みの影が、広いその場を上部から暗く、
圧迫していた。)
(暗く続く天井が、明かりの無い部屋に重い影を投げかけていたが、
透き通る床の僅かな反射光が、
下から部屋を仄かにかろうじて照らし出している。)
(天井へ染み出す、黒い物体は。 室内の中央で、凝縮し。
一つの漆黒に染まる玉座の様な椅子を
形作っていた。)
(黒い蝋が溶けて固まった様な大きな椅子の背後から、クロエは目の前に映る。
異空間のモニターを見つめていた。)
「くすくすっ。」
「ふぅ〜ん、FOTのデータって・・、けっこう正確なのね。」
(怪しげに揺らめく黄色の瞳を細め、クロエは微笑んだ。)
(しなやかに体を揺らし、クロエは、背後から。 そっと玉座に座る人物に腕を添えた。)
「書いてあった通りの場所に、強い欠片の気配がある。」
(甘く囁く様なクロエの小さな頬に。 しなやかな肩や、不思議な切り込みの入った
赤紫の服の、豊かな胸の上に。 サラサラと流れる黒髪は、まるで身体に纏わりつく
蜘蛛の糸の様に。 魅力的に、透明な床の上にまで流れていた。)
「ああ、ほら。 また。
嫌な子ねぇ。 欠片を手にしたわ。」
(囁くクロエの言葉に、玉座に座る人物は、口を開いた。)
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