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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter60 『ターゲット』 60-5


「どこに欠片を持って行くのか、追いかけられれば

良いんだけど。」

(カーテンの様に、サラサラと流れる。 美しい黒髪の奥で、微笑む黄色い瞳を。
肩越しに。 フェルゼンは、気だるそうに見つめた。)

「・・そう言っても・・なぁ・・。」

(赤い絵の具を流したように。 水分を含み、艶やかに光るフェルゼンの赤い瞳の視線に、
クロエの心は波打ち。)

(すぐ傍で、不快な表情を浮かべ、自分を見つめていることに。
不思議と。 クロエの中で、愛しさが込み上げた。)

「見ているだけで・・俺の目が、汚れる・・。」

「耐えられそうに・・ない。 なぁ・・。」

(フェルゼンは、苦痛の表情を浮かべ、浸食する黒い染みが染み出す。 重く暗い影を
投げかける天井を、気だるい瞳で見上げた。)

(部屋を上部から圧迫するその黒い影が、フェルゼンの心を落ち着かせた。)

「・・俺は・・。」

「いつ・・、お前に会える・・?」

(玉座から漆黒の天井を見上げる。)

(天井から染み出す、黒い物体は、玉座となり。
身体を投げ出し、座るフェルゼンをまるで包み込むように見えた。)

(乱れた青髪に、床に届くほどに長い深紫のマント。
投げ出された深紫の靴の両足は、疲れきっている様に見えたが。)



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