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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter61 『力になるもの』 61-1


ポッ・・ ピチャンッ

(雨粒が、欠片を握った右手に、一粒落ち。)

(夏樹は顔を上げた。)

「あ・・、天気予報。 外れたな?」

(見上げた夏樹の白い頬に。 もう一粒の雨が落ち、異空間から戻った風見市繁華街の
空の上に。 少しずつ雨雲が近付いて来ていた。)

(先程、闇から解放された女性が、繁華街の中の通路のベンチに、眠っている。)

「あ・・あら? いやだ、うたた寝しちゃったわ。 大変っ、お洗濯もの・・。」

(女性は、間もなく目を覚ますと。 夏樹の居る反対方向へ、慌てて走って行った。
女性を見送り。 夏樹は微笑んだ。)

「少し、涼しくなってきたと思ったよ。」

(頭上には、いつの間にか。 灰色の雲が立ち込め、風は夏樹の周りを
警戒するかの様に、静かに回転しながら。 足元から優しく身体を包み込んだ。)

「大丈夫。 もう帰るから。」

「家に帰って、少しは片付け。 手伝わないとな。」

(自分を包み込む、柔らかな風にそっと囁きながら。

上着のフードを被った。)

ポッ ポッ・・

(雨粒が落ちる。)

(夏樹は、濡れない様に、フードを襟元に片手で手繰り寄せながら。
欠片を上着のポケットに仕舞い。 入れ替えに、通信機を取り出した。)



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