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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter61 『力になるもの』 61-16


『痛いだろう・・。』

(夏樹は自分を捕えている風に、話しかけた。)

『・・分かってる。』

『チャンスを待つ・・。』

(締めつける魔法の風を、僅かな風見市の風が、抑えていた。)

『・・風は。 僕の味方だな。』

(だが、その時。 背後からの気配が、まるで夏樹を覆う様に、
包み込んだ。)

バサッ

(深紫のマントが、背後から夏樹を覆い。 顔を見るのを避けながらも、
長身の身体を屈め、すぐ傍で囁いた。)

「その前に・・。」

「返してもらおうか・・。」

『!』

(フェルゼンは、背中から、何かを探すように。 腕を、
夏樹の前にまわした。)

「うっ・・。」

(それは、奇妙な光景で、夏樹は息を飲んだ。
何も無い空間から伸びた二本の手が、夏樹の上着のポケットを探し当て、
右手の指先で、中の物を掴んだ。)

「!」



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