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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter61 『力になるもの』 61-17


『欠片をっ・・!』

(驚き動こうとする夏樹の肩を、左腕が押さえる。)

「くっ・・。」

(しかしその腕は、細く。 女性の腕に見える。)

(どうして、そんなことを思ったのか、分からなかったが。
宙に浮かぶ細い右腕が、ポケットから時の欠片を拾い上げた時。)

(夏樹は、とっさに理解した。)

『・・! 紫苑さんだ。』

『すぐ側に居る・・。』

(細い右腕は、指先に欠片を掴み、夏樹の背後に居るフェルゼンに向けて、
雨の雫に煌めく輝きを見せた。)

(フェルゼンが、赤い瞳を揺らし、微笑みかけた時。)

(夏樹は、背後の敵に向けて口を開いた。)

「傷つけ、壊すだけが、使い道じゃない。」

「風は、もっと有益な力になる。」

(前を向いたままの夏樹の声に、フェルゼンの表情は硬く凍りついた。)

「・・何だと・・?」

コオッ

(風は、夏樹に時を告げ。 夏樹は、風に囁いた。)



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