HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter61 『力になるもの』 61-4


『敵を倒せるか? いや、倒せても。 帰れるかどうかだ。』

ピシャンッ・・

ザーッ・・

ピシャンッ・・

(雨音の奥で聞こえた水音に。 夏樹はゆっくりと、
左後方を振り返った。)

ドクン・・

ドクン・・

(緊張で高鳴る、胸の音だろうか。 振り返った夏樹の後方には、
ただ、雨に霞む街並みがあるだけだったが。 胸の高鳴りとも違う何かが。
夏樹の中で鼓動していた。)

ドクン・・

(急速に強くなる雨は、フードの上から夏樹の頬を打ち。
少しくせづく深い紺色の前髪と、蒼白な程に白い肌に、雨粒を残した。)

「・・はぁっ。」

(変化を見逃さない様に、後方に視線を凝らしたまま。
雨の雫を避け、深い紺色の瞳が瞬きする。)

ザーッ

(雨はあっと言う間に、大粒になり。
夏樹の上着を、冷たく濡らした。)

『・・誰か。 居るのか・・?』



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ