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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter61 『力になるもの』 61-5


***

「あっ。 降ってきちゃった・・っ。」

(紫苑は、街中へ続く坂を下りながら。 次第に濃くなる雨雲を見上げて、
立ち止まった。)

ポンッ

(白く可愛い傘を広げる。)

「夏樹くん・・、大丈夫かなぁ?」

(少し大きめの、青い傘を手にして、紫苑は坂の上から。 眼下の街並みを見つめた。)

(どこに居るのか見当もつかなかったが、紫苑にはなぜか迷いはなかった。)

サァァッ・・

(雨の向こうから吹く風が。 紫苑の明るいベージュ色の髪をサラサラと揺らし。
紫苑は、傘を握る手に、力を込めた。)

「・・夏樹くん。」

サーッ・・

(雨が、降り始めた。)

***

ピチャンッ・・

(視界を奪う、雨粒の向こうで。 何かが近付く気配が、
特別な音となり、強まる雨音の向こうから。 夏樹の耳に届いた。)

ピチャンッ・・



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