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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter61 『力になるもの』 61-6


『誰かが、来る。』

(近づいてくる気配に、全身の感覚を研ぎ澄ませ、辺りに視線を走らせる。)

ザーッ

(聞こえるのは雨音の他、自分へ次第に近づいてくる。 奇妙な足音だけだ。)

ピチャンッ・・

『どこだ・・?』

(雨粒を避け、瞬きしても。 誰の姿もその場には無い。)

(ただ、冷たい雨の街がそこにあったが、夏樹の送りだした風見市の風は、街の彼方へは
吹き抜けては行かず。)

(その場が、まるで広い四角い正方形の形に。 すっぽりと切り取られた
異空間であることを、夏樹に示していた。)

ドクンッ

(聖の創り出したのではない、その異空間は。 まるで強く密閉された箱の中の様に、
夏樹を捕え。 周囲の雨と共に、近づいてくる気配と夏樹を閉じ込めた。)

『・・まずいな。』

(気配の持ち主のせいか、異空間は重く。 夏樹の上に圧し掛かり。
闇の圧力を思い起こさせる。)

ドクンッ

『大丈夫だ・・。 落ち着け。』

(圧力は、次第に夏樹の心に届いた。)



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