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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter65 『消える世界』 65-14


トッ・・

(理恵は顔を上げ、間近に迫った善の。 黒い瞳を見上げた。)

「・・くっくっくっ。

奴らも・・今になって・・、後悔しているだろうよ・・なぁ?」

「闇を葬ったはずが・・どうだ・・?」

「今や、光が消えるのを待つばかりだろうが・・。」

(善は、虚ろな瞳で。 暗く影を落とし始めた、教室の天井を見上げた。
そこに、いつも見慣れた、隠れ家の。 黒い天井を重ね合わせる様に。)

「闇は・・美しい・・。」

「そして・・、全ての命を奪う・・。」

(黒い瞳はまるで、感動している様に。 煌めいていた。)

(落ちた日の影が、教室の半分を覆い、二人を隠していた。
窓に背を向けた理恵の頬をオレンジの光が染め。 黒髪が、沈む夕日に反射している。)

(善は、息を飲んだ理恵の瞳を見下ろし。 腕を窓に着け、理恵に触れた。)

「『この・・世界に・・終焉を・・。』」

(善はそう言いながら。 理恵の小さな唇に口付けた。)

コォォッ・・

(緩めた制服の襟元から、見える善の左の首筋に。 不思議な幾何学模様が、淡く、
青紫色に煌めくのを微かに見ながら。 理恵は、目を閉じた。)

(目を閉じながら、理恵は、左足の付け根あたりに、温かさを感じた。



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